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ZEB T社屋2020年竣工

改修-ZEB T社社屋/環境-太陽光発電-地中熱ヒートポンプ-エネルギー

2025.06.17

ZEB T社屋

築30年の建物をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に改修して新社屋とした。湾
曲した大開口に内窓を新たに設け、小型化した地中熱ヒートポンプを冷暖房に利用するなどの工夫を重ねている。

一方、建物の断熱化は内部空間側で処理している。
外壁のウレタン吹き付け断熱は、もともと厚さ20mmだったものに厚さ120mmを吹き増した。
吹き抜け空間に柱と横架材を組んだ格子を立て、トリプルガラス樹脂サッシのフィックス窓をはめ込んで内窓とした。
既存のアルミサッシと新設した内窓の間にはハニカム断熱ブラインドを設け、
断熱と遮光の役割を担わせている。その他の各室の窓にも全て、樹脂サッシの内窓を取り付けた。

小型化した地中熱ヒートポンプを導入
設備面でも様々な工夫を盛り込んで省エネルギー化を図った。
暖冷房の熱源に採用したのは小型の地中熱ヒートポンプだ。ダクト式エアコンに利用するほか、
3階の執務室では天井のパイプに17度の温冷水を流す放射暖冷房を導入した。
これらと全熱交換型第1種換気設備を組み合わせ、室内の空気環境を効率的に整えた。

創エネルギー
創エネルギーは、屋上と西側外壁に設けた合計23kWの太陽光発電パネルで賄う。
外壁にも取り付けたのは、屋上のパネルが稼働しなくなる積雪時も一定の発電量を確保するためだ。
外壁の太陽光発電パネルは、周囲からの照り返しによる効果も見込んでいる。

建築研究所のWEBプログラムの計算では、
再生可能エネルギーを含む1次エネルギー削減率が102%(再生可能エネルギーを除くと同71%)となった。
20年中には、24kWの蓄電池と2台の電気自動車によるV2H(Vehicle to Home)を設置する。
稼働後には、「理論上はオフグリッド化を果たせる」(齊藤氏)予定だ。

中規模ビルをZEB改修

今回は地中熱ヒートポンプを、ダクト式エアコンと放射暖冷房の熱源に利用しています。
エネルギー消費量削減効果はどの程度になるのでしょうか。

齊藤 
建物全体のエネルギー消費量は、壁掛け式の高性能エアコンを使った場合の4分の1程度に収まる計算です。
約23kWの太陽光発電設備を設置したほか、
年内には約24kWの蓄電池、12kW相当の電気自動車2台によるV2H(Vehicle to Home)を導入する予定です。
これらが稼働すれば、理論上はオフグリッドの建物になります。

西方 
戸建て住宅でも、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にするために
10kWの太陽光発電パネルを載せることは珍しくありません。
中規模ビルとはいえ、ZEBで23kWという搭載量は少ない。
それだけ地中熱ヒートポンプによる省エネ効果が高いということでしょう。

齊藤 
改修前に比べてCO2の排出量は、省エネによって48%、太陽光発電の創エネによって41%削減できます。
合計の削減率は89%で、CO2を17.5t減らすことになります。
建築統計年報によると、延べ床面積1300m2以下の事務所ビルは全国で54万7000棟も存在します。
これらの建物全てに同様の断熱化と設備の高効率化を施すと、
957万2000tのCO2を削減できる計算になる。民生業務部門のCO2排出量の約4.5%に相当します。
全国で同様の改修を手軽に進められるようになれば、多大な効果を見込めるのです。
新本社のZEB化が、そうした取り組みに向けたひとつの指針になればと思っています。


齊藤克也氏(T常務取締役) 

 採用した地中熱ヒートポンプは北海道大学と共同開発したものです。特徴は大きくふたつあります。
ひとつは小型化です。一般的な戸建て住宅では地中熱を採取するためのスペースがカーポート1台分あれば設置でき、
ボーリングの深さも6m程度で済む。新築だけでなく改修にも利用可能です。
小型化によって、採熱部分のコストも大幅に引き下げました。
今は材工込み120万円程度で販売できるまで価格を落とした状況ですが
、最終的には100万円を切るレベルを目指しています。
国内で地中熱ヒートポンプを普及させるためには、小型化と低価格化は欠かせません。
もうひとつは、冷房利用も視野に入れていることです。
地中熱は全国どの地域でも17度という安定した熱を採取できるため、
寒冷地だけでなく、温暖地での冷房利用もできるように考えています。

西方里見氏(西方設計代表取締役) 
寒冷地でエネルギー収支を低減させようとすると、地中熱利用は貴重な選択肢となります。
いくら太陽光発電設備を設けても、積雪時には発電量が落ちてしまいますから。
ただし、従来の地中熱ヒートポンプはコストが高いのが難点でした。
戸建て住宅用で350万円程度かかるので、なかなか使えません。100万円前後になれば使いやすくなりますね。



建築概要
所在地:札幌市東区

  • 地域区分:2地域
  • 建物用途:事務所等
  • 構造・階数:鉄筋コンクリート造・地上3階建て
  • 延べ面積:430.56m2
  • 発注者・施工者:棟晶
  • 設計者:西方設計

完成:2020年9月

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