2019年6月、建築基準法改正により軒高9mの制限が解除 され、最高高さ16m以下であれば防耐火要求のかからない「その他の建築物」として設計できるようになりました。これを利用しコストパフォーマンスと汎用性の高い規格流通木材を用いた在来軸組工法とすることで計画を進め、 全体形状はシンプルな矩形とし 、断熱性能・構造・施工性の面で合理性を図りました。
木造においては、他の構造と異なり構造と断熱性能とを両立できると考えています。近年、住宅において外壁付加断熱が必須となっていますが、多くの場合厚100mmの付加断熱壁は構造を負担していません。今回、付加断熱部分を構造的に活かすため、120mm厚の軸組を2枚合わせ、総厚240mmの二重壁としました。構造用合板両面張りの中には断熱材が充填され、二重壁で構成する剛性の高いコアを両サイドに配置したダブルコア形式とし 、中央部分を開放的な執務空間とするプランとなっています。執務空間の南北面には大開口を確保 、全般的に住宅用トリプル樹脂サッシを用い、南面大開口は日射遮蔽取得型トリプルガラス+外付けブラインドとして日射をコントロールします。
使用木材は幅120mm、せい360mm以下、長さ6m以下の規格流通材とし、樹種は高い強度を有しながら地元岩手で調達可能なカラマツ集成材としています。部材断面の多くを支圧による応力伝達できるよう、軸組接合部の納まりを検討しました。3階会議室は、100m²の無柱空間を実現するため、9.1m スパンの平面トラスで構成。スギの平割材を重ね合わせ、 部材同士を嵌合接合とすることで、金物に頼らずに細い部材を編むように重ね合わせています。
外壁仕上げには地場産材であるカラマツ厚30mmすのこ板張り(ファサードラタン)を無塗装で使用。メンテナンスの軽減とともに厚板の圧倒的素材感と自然素材ならではの経年変化を楽しめます。
構造/山田憲明構造設計事務所