4.四要素(高断熱・高気密・全室暖房・計画換気) 暖かい住まいづくりの四要素 冬の寒さの厳しい北国では、寒さに対応する暖かさをはじめとした快適な室内気候が望 まれています。高断熱・高気密・全室暖房・計画換気を基本とした新在来工法や2×4工 法によって、ひと冬の暖房の石油代が3万円前後で、住まい全体が暖かく快適に住まえる ようになりました。 高断熱は、断熱材で熱が外壁や天井や床下から外へ逃げないように、高気密は隙間を少 なくし、暖かい空気が外へ逃げないように、冷たい空気が内に入らないようにすることで す。全室暖房は住まい全体を暖め、またそうすることによって冷たい部屋をなくし結露し ないように考えられています。住まいが高気密化されることによって、正体不明な隙間が 少なくなり、コントロールしにくい隙間による自然換気量が小さくなります。そのかわり、 有効で必要最小限な換気量を、明確に特定できるように確保し、計画的に、システム的に 考えるのが計画換気です。 高断熱・高気密・全室暖房・計画換気の四要素が相互にうまくバランスよく関連するこ とによって快適な室内気候ができあがります。 [1]高断熱 (A)断熱効果と熱損失と施工の注意点 住まいから熱が逃げるのは天井・外壁・床・窓ばかりでなく、家の中にある間仕切壁や 二階のふところや換気などから失われる様子が図[1ー17]と図[1ー25]から理 解できます。間仕切壁内は10℃位になり冷々としています。これらは熱が壁などを伝 わって失われるものと、暖められた空気そのものが隙間から失われるものとに分けられ ます。断熱材を利用する目的は壁などを伝わって熱が失われるのを防ぐことにあります。 断熱材で失う熱を少なくするには、より性能がよいものを使用したり、より厚いもの を使用すればよいのですが、求める性能レベルやコストによってどの程度にするか判断 されます。また、性能のよいものやただ厚くすればいいということでもなく、壁など図 [2ー3]にのように、隙間なく精度よく断熱欠損がないように工事することが大切で す。そうしないと、図[1ー17]と図[1ー25]のように壁や断熱材の中で気流が 生じて熱が失われ、断熱材の効果を著しく少なくします。理論値の1/2から1/3の 性能しかなくなります。 まだまだ厚さ50ミリの 断熱材を使用しているのをよく見かけます図[2ー4]。 これですと、厚さが105mmの外壁には精度よくはいらず、どうしても隙間ができ、 冷気の通路になって、断熱効果が著しく低下してしまいます。断熱材はコスト、環境 問題や施工性、性能からいってグラスウールが基本なのですが、袋入りではなく厚さ 100ミリの裸のグラスウールを柱や間柱の間に合うように入れ、室内側に防湿シー ト、外側に透湿シートを別個に連続して貼ります。 (B)改良された木造在来工法 断熱材の性能を維持するには、いかに施工が大切かを述べてきましたが、在来工法は 「夏をむねとし風通しを良くする〜」という南方型の住宅であり、暖かい住まいづくり は困難なことでした。それが、北海道で十数年来の官学民一体の研究や実践で改良され、 気密や断熱がすぐれた新在来工法ヤOSP工法などを始めとした暖かい住まいや理論が できあがりました。在来工法と対極的な立場にある2×4工法は、パネル工法で必然的 に気密がよいので、暖かい住まいづくりには適しています。普通に断熱材をつめたので は、在来工法より2×4工法が暖かいという住まい手の実感を良く耳にしますが、それ は当っています。しかしながら、四要素にもとづいた新在来工法やOSP工法は、2× 4工法とはくらべものにならないほど暖かい良好な室内環境を維持しています。 (C)断熱材の厚さとその効果 こうしたことから、住まいと断熱を考えるには、全体的な考え方の四要素や工法をふ まえなければなりません。断熱材の役目は壁・天井・床から失われる熱を少なくするこ とで、その効果は断熱材の性能と厚さに関係しています。図[1ー27]はグラスウー ルの異なる厚さの効果を熱損失係数によってあらわしています。 厚さが50mmから100mmの効果は1.86倍、100mmから150mmでは1. 43倍であり、50mmから100mmの効果がおおきくなっています。 一時期、暖かい住まいづくりの性能競争は断熱材の厚さでした。105mmの壁厚を ダブルにして200mmの断熱材をつめたりしていました。コスト的には、断熱材や壁 をさらにつくったりで、大きなコストアップになってしまいます。それよりは、図[1 ー27]からわかりますが、窓や換気(気密)の性能をあげるのにコストをかけた方が バランスがよくなり、全体的に性能があがってきます。 天井や床は断熱材の厚さを増やすことは困難ではないのですが、壁の場合は105m mのなかで、より性能のよいものを使用した方が得策です。 (D)断熱材と結露 50mmのグラスウールを雑にいれている場合は、表面結露や内部結露していても空気 の流通があって、土台や柱が腐ることは少なかったのですが、100mmの場合は注意し なければなりません。100mmを精度よく施工していくと、防湿層+グラスウール+透湿 層+通気層を効果的にもうけなければ内部結露して土台などが腐る恐れがあります。結露 の原因になる室内の水蒸気が壁のなかにはいらないように防湿層をもうけます。 施工不備箇所から水蒸気がもれて結露したとしても、透湿層から外部側の通気層に水蒸 気を吐きだせます図[1ー23]。基本に忠実であれば、壁のなかは外部側と呼吸ができ 、乾燥状態になっていて、腐れの心配はありません。 (E)断熱材の種類と施工パターン 断熱材には表[2ー1]のように種々の材質や施工方法があります。いままで述べてきた ような基本を守った精度の良い施工をしていれば、どんな材質や施工方法も考えられます。 後はどの程度の性能のレベルなのか、どの位のコストなのかによって判断されます。 断熱材の施工パターンは、壁・天井・床などのなかにつめ込む内断熱工法(図[2ー5]) と、外側に貼る外側断熱工法(図[2ー8])とに大別されます。両方が場合によって混合 されたものもあります図[2ー6]、図[2ー7]。 壁のなかには、胴縁・筋違・スイッチ・コンセント・配管などがあります。このなかに断 熱材を精度よく入れることは大変手間がかかることですし、断熱欠損が生じやすくもありま す。これらをクリアーできるならば、ローコストで標準的なグラスウールが基本になるでし ょう。グラスウールは裸で密度が16kg/m3の細繊維以上の性能(図[2ー10])の ものがよいでしょう。 工務店によって施工精度が望めない場合は、コストはかかりますが、発泡ポリスチレン種 の外側断熱工法をおすすめします。内断熱からみると、筋違などのじゃまなものがなく施工 しやすくなっています。また結露がおきても、土台や柱の外側なので影響が少なく、発泡ポ リスチレンも結露に強いので安心です。 [2]高気密 隙間やなくすことは、グラスウールの性能保持のためにも必要ですが、冷暖房効果を高め るには、隙間から直接逃げていく熱を防がなければなりません。普通の在来工法では、隙間 が多いことから、家の中の空気が1時間あたり3回ほどいれかわります。この数値を換気回 数と呼びますが、冷暖房時に3回/hの換気回数は過剰であり、多くのエネルギーを失うと ともに室内気候が良好ではありません。 (A)気密箇所 図[1ー25]から高断熱・高気密住宅は全体で一般施工在来木造住宅の4倍の省エネル ギー性を持っていることがわかります。一般在来において隙間から熱が逃げやすい部位は、 2階ふところ、間仕切壁、換気口などで、熱損失量が三ヶ所合わせて2,990×10kcal にもなります。高気密では2階ふところと間仕切壁の隙間がなくなり、換気は計画換気によ って、255×10kcalとなり、実に1/11に減っています。この数値から、一般の在来 工法では壁の隙間や空隙が床下や天井裏と通じており、冷暖房時に多くのエネルギーが失わ れていることが理解できます。 隙間や空隙から多量の熱を失わないためにも、また、断熱材の性能を失わないためにも、 図[2ー5]のように外壁や間仕切壁の上下端をしっかり塞ぎ、窓まわりも塞いで高気密化す ることが必要です。その際に用いるのは、木の気流止めや防湿・気密シートなどです。防湿・ 気密シートは外部側の透湿材や通気層とともに内部結露を防ぐ役割を果たしています。 (B)高気密化の目的 高気密化は、単に省エネルギーだけが目的なのではありません。主な目的として、 1、年間を通した一定所要新鮮空気の確保 2、冷気による不快感をなくし、あわせて省エネルギーを図る 3、構造体内部に外気の侵入を防ぎ、断熱性能を保持する 4、内部結露を防止し、住宅の耐久性を増したり不快感をなくす などがあげられます。 (C)気密性能 気密性能の目安として、例えば北海道の「北方型住宅」の誘導型では隙間相当面積の目標値 を2cm2/m2においています。この数値は床の面積1m2当たりに2cm2の隙間が空い ていることを示しています。この数値の住宅では、隙間風はほとんど感じられません。しかし 当初の普及型では5cm2/m2前後で、これでは風が強い日などは隙間風を感じ寒く思われ ます。省エネルギーの告示や公庫の気密も5cm2/m2に設定されていますが、2cm2/ m2をきる性能が欲しいものです。 最近の施工では、初めてでも3.5cm2/m2を切り、2度目からは2cm2/m2を切 るようになっています。慣れてくると1cm2/m2を切るようになります。極めて施工精度 の良い所はグラスウールで0.2cm2/m2台までだしています。ここまでくると、気密性 能が全国一番だと無意味な競争に陥ってしまいがちです。最近では測定のルールがほぼ定まっ てきましたが、まだまだ、それぞれの団体により差があります。数値はテーピングの程度や外 部環境や計算方式にも影響されますから、建築学会ではコンマ以下の数値は誤差の範囲とし、 整数値化しようとしています。 (D)隙間相当面積 (有効開口面積、漏気回数、換気回数) 気密性能の単位が幾つかあり多くの方々は混乱するようです。気密試験の数値は建物の中に 送風機で圧力をかけ、排気したり吸気したりしたときの通気量と、建物内外の圧力差から求め ます。日本の建築学会では10パスカルの圧力を、カナダや北欧はでは50パスカルをかけま す。 10パスカルの圧力は風速で5メートル/秒前後でそんなに強い風ではなく、日常的なもの です。ですから、気密試験の時は風に影響されないように注意が必要です。50パスカルの圧 力は風速では25メートル前後もの非常に強い風です。風上に向かって歩くには体を前屈させ、 力を入れないと進めないほどです。廻りの状況に影響されない50パスカルの強い圧力のほう が絶対値に近く良いのですが、日本の基準値は高気密の建物を想定したものではなく、逆に隙 間の多い建物には数値がでてきにくいのです。 10パスカルでの日本の数値は隙間相当面積や有効開口面積と両方の言葉で呼ばれています が同じものです。北欧や日本の一部では50パスカルをかけた数値を漏気回数とか、50パス カル時の換気回数で呼びます。同じ言葉の換気回数でも内容が違います。 [3]全室暖房 従来の建て方ですと、当初のボイラーや配管などの設備費や灯油などの維持費が大きいこと から、全室暖房は考えられないことだったのですが、高断熱・高気密の家はそれ程負担になら なく全室暖房が可能になりました。 最もローコストの方法はFFストーブで、1台で50坪くらいまでは可能です。もっと良い 室内気候を得るにはパネルヒーターなどで熱源を拡散することです。室内での温度差や1日の 温度差の変化が少ないように、その家にあった暖房のシステムを考えましょう。 全室暖房は温度環境ばかりでなく、室内の温度差を少なくすることによって、室温の低いと ころでも最低15度以上に保ち結露の問題も解決しましょう。 暖房を考える時は、大きな窓の下に放熱器を置いて冷輻射を防いだり、吸気口などの外気が 浸入してくる経路に放熱器を置いて冷気流を防いだりすることが必要です。 (A)暖房システム a)パネルヒーティング 図[2ー11] 主なパネルヒーティングは、燃料が灯油やガスのボイラーで各箇所のパネルヒーターに温水 を運ぶ方法です。深夜電力貯湯温水器を熱源にする方法もあります。従来の家だと3万kcalの 大きなボイラーとパネルヒーターが十数台も必要で150万円から200万円程のイニシャル コストがかかりました。 熱損失の小さな高断熱・高気密の家だと、5,000kcalの小さなボイラーと、パネルヒー ターは居間の窓側、和室、廊下などに3〜4台設置するだけで十分です。イニシャルコストは 80万円前後です。窓辺にパネルを置くと、窓面から降下する冷気がガラス面からのひんやり とした冷輻射を防ぐことができます。輻射式で暖房がマイルドなうえに、熱源を分散するので 室内温度環境は良好です。ボイラーや配管工事には故障が多いものや、メンテナンスがかかる ものがありますので、メーカーや施工の設備会社の実績を見る必要があります。 b)床暖房システム 図[2ー12] 熱源が石油やガス、深夜電力温水器などのボイラーで温水を放熱場所まで運びます。配管さ れた床暖房パネルを接続するタイプ、パネルを敷込み後配管するタイプ、パネルを使わず配管 だけを行うタイプなど三つに分けることができます。 長所は、個別式の床暖房と同様なのですが、熱損失が少ない住宅では床面の温度を低くでき ます。窓下のコールドドラフトが解消しにくいことから、パネルヒーターとの併用も多く使用 されています。温水の他に電気や深夜電力蓄熱式などがあります。温水は水もれなどがありま すが、電気の場合は心配ありません。 イニシャルコストがかかるのと、建築物本体との接合部も多くメンテナンスが必要というこ とからも、性能が良い住宅では全体のバランスを考えると必要がありません。表面温度が暖か く感ずるほどの高温では低温やけどやリュウマチなどで人間の間接等にダメージを与えます。 c)セントラル温風熱交換換気暖冷房システム 図[2ー13] セントラル換気システムのダクト配管を利用することにより、換気と暖冷房が一緒にでき経 済的です。空気を運ぶので温水を運ぶ配管より故障が少なくメンテナンスが楽です。性能の悪 い住宅だと温風を高温にし、多量に送らなければならず不快感があります。また、最近ではダ クト内のカビやダニが問題になっています。詳細は別項。 d)FFストーブの余熱をダクト配管 図[2ー14] 石油ストーブの余熱をダクト配管で各部屋や2階ホールのみに送風するシステムで、高性能 住宅は全室暖房ができます。プランに左右されず、設備も簡単です。欠点は温度コントロール しにくいことです。 e)FF式ストーブにパネルヒーター 図[2ー15] ストーブの排熱を利用したものや、専用の燃焼室を持ち、床暖房回路を内臓したFFストーブ 1台で、1階をストーブで2階を床暖房やパネルヒーターで暖める簡易的システムで全室暖房 をします。 f)深夜電力蓄熱暖房 昼の電気の約1/3の割安な深夜電力を使って夜の間に耐火特殊レンガの蓄熱材に1日の暖 房に必要な熱を蓄え、昼間に放熱して部屋を暖めます。対流ファンによる対流式のものがあり ます。自然放熱による輻射式はファンやフィルターが必要ないため音がなく、掃除の手間が簡 単です。クリーンで安全性が高く、操作も簡単なものが購入できます。 上の表のように格安な深夜電力利用でも灯油より高いのですが、メンテナンスをも考えた場 合、温水パネルヒーターと同じか多少高めくらいです。これで高性能住宅には2〜3台で全室 暖房ができ、設備投資も60万〜80万円ですみ、イニシャルコストもランニングコストも思 ったほどかかっていません。高齢者住宅や共働き住宅の場合は安全性を考えて、暖房・給湯・ 調理器などオール電化にしてもいいのではないでしょうか。 g)FF式ストーブ1台で全室暖房 図[2ー16] 高性能住宅はFF ストーブ1台の暖気の自然循環で全室暖房できます。最も安い全室暖房方 式です。そのためには間取りの工夫が必要です。住宅の中心の吹き抜けた居間にストーブを 置き、隣接する部屋をできる限り開放的にします。吹き抜けや階段を使って2階へ熱が循環 するように、部屋にはランマなどを設けます。欠点はプライバシーに欠ける点や音が伝わり やすいことがあげられます。 h)その他の暖房機器とソーラー 図[2ー17] いままであげたものの他にペチカ、暖炉、鋳物ストーブなど伝統的なものや、最近では太陽 熱を利用して空気を暖め、補助暖房に利用するものなどがでています。 太陽光をエネルギー源とする太陽電池と商業用電源を併用する暖冷房のソーラーエアコンが でてきています。太陽電池はまだまだ高いのですが、暖房能力4.0kw、冷房能力2.8kwの冷 暖房セットで150万円と手が届くようになってきました。高性能住宅ならばこれ1台で全室 の冷暖房ができます。また、太陽電池でつくった電気があまる場合は電力会社に売り、足りな いときは買うシステムもあります。 (B)セントラル温風熱交換換気冷暖房システム 冷暖房や換気のシステムにはさまざまな種類があるのですが、熱交換換気冷暖房システム は高断熱・高気密住宅の省エネルギーで暖かく快適な室内気候づくりに向いています。高断 熱・高気密住宅は北国からひろがってきたので暖房と換気が主体でしたが、最近では冷暖房 が加えられるようになってきました。 関東以南では夏の冷房エネルギーが大きいことから、省エネルギーの高断熱・高気密住宅 の全室換気冷暖房は四季をつうじてランニングコストが低くおさえられます。ただし住宅の 性能は熱損失係数2kcal/m2・h・℃、自然換気回数0.5回/以下とほとんどメーカー にうたわれ、これは高性能住宅が背景となっています。 熱交換換気システムのダクト配管に暖房を加えることで熱交換換気暖房システム、さらに 冷房を加えることで熱交換換気冷暖房システムなどがあります。温風や冷風を送る冷暖房シ ステムは、熱気を運ぶので温水を運ぶ配管よりも故障が少なく維持管理が楽です。 しかし、建物の性能に大きく影響されます。住宅の断熱・気密の性能が良いと、わずかな 風量でそれほど高温にしなくてもよいですが、性能が悪い住宅では大量に高温な空気を送風 するので、快適な室内環境になりません。 a)熱交換換気暖房システム 1、FFストーブを用いたもの 図[2ー14] FF ストーブと熱交換換気システムの組み合わせで全室をダクトによる温風暖房と換気を するイニシャルコストの低いシステムです。居間のFFストーブの熱を集熱フードやマント ルピースで効率よく集め、温風が送風ユニットに送られます。 送風ユニットは別の場所に設置されている熱交換換気ユニットから新鮮空気がダクトで 送風され、温風と一緒に新鮮な空気が各部屋に供給されます。各部屋に供給された暖かい 空気はドアの隙間などから廊下なども通って一部は空気吸い込み口のあるトイレや台所、 洗面所へと還流し煙やにおい、水蒸気、汚染物質などを伴って吸い込まれ、熱交換換気ユ ニットで熱回収された後屋外へ排出されます。 また大部分の空気はストーブのある居間へと還流し、集熱フードやマントルピースでス トーブにより再度暖め送風ユニットへ送られ、同様に巡回します。各部屋への送風量は送 風ユニットのリモコンや吸気口のダンパーによって調整できます。居間のストーブは反射 板付きなので快い輻射暖房は寒がりなお年寄りには最適でしょう。 2、温水コイルユニットを用いたもの 図[2ー13] 温水コイルユニットをもちいたものは、暖房用の温水ボイラーと温水コイルユニットを 組み合わせたダクト配管による全室の換気と暖房をするシステムです。熱交換換気ユニッ トで捨てられる汚れた空気から熱を回収し、暖められた温水が送られる温水コイル付送風 ユニットでさらに暖め、ダクトで新鮮な温風を各部屋へ送風します。各部屋への送風量は 1、と同様です。1、2、共に暖房の不要なシーズンは換気のみおこないます。 b)熱交換換気冷暖房システム 図[2ー18] 快適な高断熱・高気密住宅はいまや、北国だけの専売特許ではなく、熱交換換気暖房シ ステムに冷房を組み込むと、関東以南でも夏を含めたオールシーズンをローコストで省エ ネルギーに、夏を涼しく冬は暖かく快適に過ごせます。この冷暖房システムは熱源によっ て1ヒートポンプ式。2冷専(冷房専用)+温水式。などがあります。 1、ヒートポンプ式 図[2ー19] 動力が電気の空気熱源ヒートポンプです。夏は室外機から熱冷媒が熱交換換気暖冷房 送風ユニットに運ばれ、冷熱を回収した新鮮空気をさらに冷やし、ダクトで各部屋に送 風し、全室の暖冷房と換気をします。冬は室外機から熱媒が運ばれ、夏と同じ形式で全 室暖房と換気をします。動力が電気の空気熱源のヒートポンプなので冷暖が兼用でき、 場所もとらず、低騒音でクリーンで利便性に豊んでいます。 しかしながら、空気熱源のため冬の暖房能力は不足してしまう地域があります。関東 以南の高地をのぞいた温暖な地域の全室換気冷暖房システムに適しています。 2、冷専+温水式はヒートポンプ式 図[2ー20] 暖房能力不足の寒冷地の全室換気冷暖房にむいています。冷専の冷房は1と同様に電 気動力で空気熱源です。空気熱源の効率が落ちる冬の暖房はボイラーにより温水をつく って熱交換換気冷暖房送風ユニットに運ばれる温水式です。以下の巡回は1の冬と同様 です。 3、冷温水式は熱媒が夏には冷水による冷房、冬には温水で暖房 図[2ー21] これらの冷房や暖房のシステムの能力は、冬の暖房出力はヒートポンプをのぞいて6 000kcal/h、8000 kcal/h、大きいもので12000kcal/hもあり、高断 熱・高気密の住宅は寒冷地でも十分でしょう。夏の冷房能力は4000kcal/hから70 00kcal/hほどのものがあります。冷暖房能力や換気量能力は、熱負荷計算をして、 住宅の性能や大きさにあわせて選びましょう。 価格は方式や住宅の大きさによってバラツキはありますが、熱交換換気暖房システム でおおよそ110万円前後、熱交換換気冷暖房システムのヒートポンプでおおよそ13 0万円前後、冷専+温水式でおおよそ150万円前後です。 [4]計画換気 計画換気とは、高気密化するから換気が必要だといった考え方ではありません。逆に、 少ない換気量で最大の効果を得るため、換気経路や換気量を明確化し、制御し、全体的 にシステムを計画化していくのに高気密化が不可欠なのです。 家のつくりが高気密になってくると、それまでの問題とは別に換気の問題を考えねば ならなくなってきました。快適な室内気候を得るためにも是非必要なことです。日照と 通風は住まいづくりの基本で、夏に涼しさを求めたり、湿気を逃すのに通風は有効な手 段でした。それが、冷暖房が普及するにつれて、自然まかせの通風とは違った概念の換 気が必要になってきました。 (A)計画換気で快適な室内気候 全室暖房は住まい全体を暖め、またそうすることによって冷たい部屋をなくし結露し ないように考えています。住まいが高気密化されることによって、正体不明な隙間が少 なくなり、コントロールしにくい隙間による自然換気量が小さくなります。そのかわり、 有効で必要最小限な換気量を、明確に特定できるように確保することが計画換気です。 高断熱・高気密・全室暖房・計画換気が相互にうまく関連することによって快適な室内 気候ができあがります。 a)計画換気の目的 換気の要素には除湿、除臭、湿気や臭気の拡散防止、新鮮空気の導入、省エネルギー などがあげられます。 住まいの中での生活からは、人体の代謝による二酸化炭素、炊事・用便・入浴などか らでるホルムアルデヒド、放射性物質ラドンなど人体に有害なものが発生しているので す。 カビやダニが増えるのも健康上問題です。湿気は、4人家族の生活では、人体から4 リットル、炊事で1.6リットル、入浴で1.3リットル、洗濯乾燥から0.9リットルな ど1日に発生する水分が合計9.4リットル、1升ビンにして5本もが家の中に蒸発して いることになります。従来の寒い家なら、この大量の水蒸気が低温の窓や非暖房室で冷 えて水に戻り結露になります。結露や湿気は、建物を腐らせたり、人体に不快感を与え たり、カビやダニの発生を増やしてしまいます 。 湿度に関しては、アレルギーで問題となっているカビやダニは湿度を低い状態にして おくと発生がおさえられます。逆にインフルエンザ・ウィルスは湿度が低い状態では高 い生存力を保っています。これらから判断すると50%程度の湿度が人体にとっては望 ましいようです。 このように、住居が結露しないように湿度を調整するばかりではなく人体と住居の両 方の健康を考えて湿度調整する必要があります。汚れて排出する空気から熱を回収し、 新たに導入された新鮮空気に熱を与える熱交換換気装置とダクトによりシステム化され たものと、汚れた空気をダクトで排気する装置と各給入口によりシステム化されたもの があります。他に個別の換気扇を利用し、全体の換気をローコストに考えた計画換気も あります。 b)必要な換気量 在来工法では、住居の中の空気が1時間あたり1.5回から3回ほど入れかわる隙間が あります。これだと、暖房時や冷房時に暖めたり冷やしたりした空気がどんどん逃げて しまい、エネルギーロスが大きくなります。こんなことから住居の気密化がはじまりま した。 2×4工法や鉄筋コンクリートでは隙間が少なく、1時間あたり0.5回前後の自然換 気によって空気が入れかわります。隙間による自然換気でのエネルギーロスが在来工法 に比べて1/3ということです。北海道での研究と実積により、在来工法を改良した新 在来工法などは2×4工法以上の気密が保持できるようになりました。 気密の性能は隙間相当面積といって、床面積1m2あたり何cm2の隙間があるかで 表現されます。理解しやすいのは相対的なものの見方なのですが、換気回数といって、 1時間あたり室内の空気が何回入れかわるかの単位があります。在来工法の隙間相当面 積は10cm2/m2以上、換気回数に換算すると1.5回/h以上、新在来工法の隙間 相当面積は2cm2/m2以下、換気回数は0.5回/h以下ということになります。 住まいで衛生上必要な換気量は一人当たり25から30m3/hが推奨されており、住 宅全体では100から150m3程度の換気量は必要です。換気回数で0.5回/hほど であり、タバコの煙や生活臭などを考えた場合は1回/hほど欲しいものです。従来の家 は風が強い時には隙間風が多く換気量が増えて冷気による寒さが厳しくなります。高気密 化することにより風の影響を受けなく、自然換気回数0.5回/hに加えて0.5回/hの 計画換気を行うことで良好な室内気候が生まれてきます。 c)換気システムの種類 換気は、自然換気と機械換気があり機械換気は個別換気と計画換気に分けます。個別換 気は台所・便所・洗面所・居間・個室などになんとなく換気扇がつけられています。計画 換気は住居の空間構成によってあらかじめ計画され、適正な屋内全体の給排気のバランス や経路や換気量をシステム的に考え、エネルギーの最適配分と人間と住居の健康が満足さ れます。 省エネルギーについては、汚れて排出する空気から熱を回収し、新たに導入された新鮮 空気に熱を与える熱交換換気装置とダクトによりシステム化されたものと、汚れた空気を 計量的にダクトで排気する装置と各給入口によりシステム化されたものがあります。他に 個別の換気扇を利用し、全体の換気をローコストに考えた計画換気もあります。これらは 除湿・排湿機能をもち、湿度調整ができるのです。 強制換気は次の3つに分類されます。 第1種換気 強制給排気を行い室内外の圧力差がほとんど生じないもの図[2ー23] 第2種換気 強制給気を行い室内が正圧になるもの 第3種換気 強制排気を行い室内が負圧になるもの 図[2ー24] 第2種換気は室内の圧力が強く水蒸気が外壁に押し出され結露しやすい危険な状態にな り住宅ではほとんど使われていません。住宅の計画換気は第3種換気の排気ファンによる 排気と自然給気口の組み合わせ、第1種換気の集中機械換気に分けられます。 とりわけローコストなのは第3種の中の一つの方法で、便所や浴室の排気ファンで住宅全 体の空気を集められるように配慮する方法です。給気口の位置は住宅の広い範囲を経由する ように計画します。 第1種においては熱回収型の同時給排熱交換ユニットにダクトを配管 し、全体的にシステム化します。 また最近では、排気型の計画換気が増えています。熱交換タイプのものは給気ダクト内の 空気汚染が考えられます。ビル建築ではシック病などといって社会問題になっています。こ うなると何のための換気か解らなくなります。ダクト内や熱交換器内の定期的な清掃が必要 なのですが、管理の良いビルをなど除いて現実的には行われていません。排気型は給気ダク トがなく、寒冷地用給気レジスターは汚れが目に見え、また掃除がしやすくなっています。